建設業のファクタリング|工事代金を資金化する前に確認したい約款の譲渡条項と、国の下請債権保全支援事業

建設業の工事請負代金は、完成・引渡しの後に支払われるため、材料費や外注費を先に負担する下請ほど資金繰りが苦しくなります。ファクタリングで資金化する前に、契約書(標準約款)の債権譲渡条項、建設業法が定める下請代金の支払期日、国土交通省が創設した下請債権保全支援事業を確認してください。公的な一次情報をもとに、建設業ならではの注意点を整理します。
01結論:契約書の約款と、国の公的制度を先に確認する
建設業の工事請負代金も、ファクタリングで資金化できます。ただし、他の業種と違って先に確認すべきことが3つあります。
- 1契約書(標準約款)の債権譲渡の条項。譲渡に承諾が必要な契約が多い
- 2国が用意する公的な資金化の制度(下請債権保全支援事業など)が使えないか
- 3建設業法が定める下請代金の支払期日。元請の支払が遅れていないか
工事の完成前の債権を売るのか、検収が済んだ請求書を売るのかでも、使える手段が変わります。順に見ていきます。

02建設業の資金繰りが苦しくなる構造と、法律上の支払期日
国土交通省の検討資料は、請負契約は完成物の引渡しと同時に支払の義務が生じるため、前金払や部分払などの制度が設けられていると整理しています。
それでも下請は、材料費や外注費、労務費を先に払い、元請からの支払を待つ立場です。そこで建設業法は、下請代金の支払について期限を定めています。
e-Gov法令検索「建設業法」、国土交通省「手形による下請代金の支払」資料より作成。24条の6は、下請が特定建設業者や一定額以上の資本金の法人である場合を除く。

元請の支払がこの期日を過ぎているなら、資金繰りの問題の前に法令の問題です。契約書の支払条件と照らし合わせてください。
元請の違反を国土交通大臣や都道府県知事、公正取引委員会、中小企業庁長官に通報した下請に対し、取引の停止などの不利益な取扱いをすることは、同法24条の5で禁じられています。
03契約書の「権利義務の譲渡」条項を確認する
工事請負契約は、国が作成・勧告する標準請負契約約款をもとにしたものが多く、約款には債権譲渡についての条項があります。
公共工事標準請負契約約款の第5条は、受注者が契約から生じる権利を第三者に譲渡するには、あらかじめ発注者の承諾を得ることを求めています。
2019年12月、中央建設業審議会は、2020年4月施行の改正民法を受けて約款を改正しました。譲渡制限特約は維持したうえで、資金調達の必要がある場合の譲渡を認める条文が加わっています。
国土交通省「民法(債権法)の改正を踏まえ、建設工事標準請負契約約款の改正を決定・実施を勧告」(令和元年12月23日)および改正約款より作成。
これらは国が示した標準の約款で、実際の契約書が同じ条文とは限りません。標準を使わず独自の契約書を使う元請も多く、「承諾なく譲渡できない」とだけ書かれている場合もあります。
改正約款は、譲渡制限特約に違反した場合や、資金調達目的で譲渡した資金を工事以外に使った場合に、契約を解除できるとしています。譲渡して得た資金は、その工事のために使う前提です。
民法上は、譲渡制限特約があっても債権譲渡は有効です。一般論は譲渡禁止特約があってもファクタリングできる?で解説しています。
ただし建設工事では、譲渡制限特約を設ける理由が、弁済の相手方の固定だけではないと考えられています。
国土交通省の検討資料は、工事の適正な施工や完成、前払金の適切な利用なども挙げ、債権譲渡が債務不履行や契約解除に当たるかは個別に検討が必要としています。
04民間のファクタリングより先に、国の制度を確認する
建設業には、国土交通省が創設した債権の資金化・保全の制度があります。対象になるなら、民間のファクタリングと比べる価値があります。
建設業振興基金「下請債権保全支援事業」、国土交通省「地域建設業経営強化融資制度について」より作成。
下請債権保全支援事業は、2010年3月に国土交通省が創設しました。債権の買取は、金額の確定している個別債権(手形等)が対象で、売買成立後すぐに入金される仕組みです。
公式の案内では、手形や請求書1枚から利用でき、取引先に知られずに債権を保全できるとされています。ただし、保証履行に至った場合はこの限りではありません。
保証料率や買取手数料率は、取り扱うファクタリング会社ごとに異なります。助成を含めた条件は、各社に個別に問い合わせる形です。
公共工事標準請負契約約款の第5条の注は、受注者が地域建設業経営強化融資制度や下請セーフティネット債務保証事業で資金を借りる場合を、発注者が承諾を行う例として挙げています。
約款は、これらの制度の利用を、承諾の典型例として想定しているということです。
05民間のファクタリングを使うときの注意点
公的制度の対象外、または条件が合わない場合は、民間のファクタリングが選択肢になります。建設業では次の点に注意してください。
- 買取の対象は検収済みの債権が基本。 ベストファクターは公式サイトで、検収を完了し入金日が確定している売掛金なら業種を問わず買取可能としている
- 完成前の債権は不確定要素が多い。 国土交通省の資料は、設計変更や解除で金額が変わりうる債権と整理している。受注段階の資金化は注文書ファクタリングの領域
- 譲渡禁止特約付きの債権は会社ごとに対応が分かれる。 ベストファクターは買取を断る場合があるとし、GMO BtoB早払いは買取対象としている
- 3社間は売掛先(元請・発注者)の承諾が前提。 同意の工程のぶん、時間もかかりやすい
ベストファクターは公式サイトで、最も多く利用されている業種は建設業と公表しています(自社公表)。えんナビも建設業向けの解説ページを公式サイトに設けています。
複数社の条件は、必ず見積もりで比べてください。手順はファクタリングの相見積もりの取り方、費用の目安はファクタリング手数料の相場は?にまとめています。
買戻しや償還請求を求められる契約は、実態によっては貸付と見なされるおそれがあります。契約前に償還請求権と、ファクタリングを装った違法業者の手口を確認してください。
06どの手段を選ぶか:立場と債権の状態で決まる
- 公共工事の元請で、工事の途中で資金が必要 — 地域建設業経営強化融資制度の対象か、発注者に確認する
- 下請で、元請の支払が遅い・取引先の倒産が不安 — 下請債権保全支援事業の保証・買取、または支払期日の確認
- 検収済みの請求書があり、早く現金化したい — 民間のファクタリング。複数社で見積もりを取る
- 工事が未完成で、資金が足りない — 契約書の譲渡条項を確認したうえで、公的制度や融資を検討する
個人事業主として工事を請け負う場合の注意点は、フリーランス・個人事業主がファクタリングを使う際の注意点も参考にしてください。
07まとめ
- 1建設業の工事代金もファクタリングできるが、先に契約書の譲渡条項を確認する
- 2標準約款は承諾制。2019年12月の改正で、資金調達目的の譲渡を認める条文が加わった
- 3特定建設業者が元請なら、下請代金の支払期日は引渡しの申出から50日以内が上限
- 4下請債権保全支援事業は、保証料・買取手数料に国の助成がある。まず対象かを確認する
- 5民間のファクタリングは検収済みの債権が基本。複数社の見積もりで比べる
本記事は国土交通省・建設業振興基金などの公開情報に基づく一般的な整理です。個別の契約への適用は、弁護士や行政書士などの専門家に確認してください。
本記事の情報源
以下の公開情報を2026/10/03時点で確認して作成しています。手数料や条件は変更される場合があるため、お申し込み前に必ず公式サイトでご確認ください。


