でんさい(電子記録債権)は現金化できる?割引・譲渡・ファクタリングの違いと手形廃止後の選択肢

取引先から「でんさいで支払う」と言われたが、満期まで待てない場合はどうするか。でんさいは満期前でも、金融機関での割引や取引先への譲渡で現金化できます。ただし割引は金融機関が独自に提供するサービスで、譲渡・割引では原則として譲渡人が保証を負います。2027年度初の手形交換廃止、取適法で変わった受け取り側の注意点とあわせて、ファクタリングとの違いを公式情報から整理します。
01結論:満期前の現金化は可能。ただし割引は銀行次第で、責任も残る
先に結論です。でんさい(電子記録債権)は、支払期日(満期)より前でも金融機関への割引や取引先への譲渡で現金化できます。
注意点は2つあります。1つは、割引が全国統一のサービスではなく、各金融機関が独自の判断で提供するものである点です。
もう1つは、譲渡や割引をしても、原則として譲渡人が保証を負う仕組みになっている点です。支払企業が払えなければ、あなたに請求が来る可能性があります。

ファクタリングは売掛債権(請求書)を売る取引で、でんさいの割引とは対象も仕組みも違います。後半で違いを整理します。
02でんさいとは:手形に代わる電子記録債権
でんさいは、株式会社全銀電子債権ネットワーク(通称「でんさいネット」)が取り扱う電子記録債権です。
でんさいネットは、電子記録債権を「手形・指名債権(売掛債権等)の問題点を克服した金銭債権」と説明しています。
受け取る側にとっての特徴として、同社は次の点を挙げています。
- 手形と異なり印紙税が課税されない。領収書の印紙代・郵送代も不要
- 現物がないため、紛失や盗難のリスクがない
- 支払期日になると口座に自動的に入金される。取立手続きは不要
- 分割して譲渡や割引ができ、必要な分だけ資金化できる
期日振込との違いも公式に説明されています。受取企業は、他の取引先への譲渡による支払への充当や、割引による早期資金化ができる点です。
03なぜ今、でんさいなのか:2027年度初に手形の交換が廃止される
背景には手形の廃止があります。金融庁は、銀行界が自主行動計画で「2026年度末までに電子交換所における手形・小切手の交換枚数をゼロ」にすることを最終目標としていると公表しています。
あわせて、「2027年度初から電子交換所における手形・小切手の交換を廃止する」としています。
切り替え先として挙げられているのが、でんさい等の電子記録債権やインターネットバンキングによる振込です。
全国銀行協会は2026年6月、交換廃止の前に最終振出期限を設ける金融機関があると周知しました。
金融機関によっては9月30日が最終振出期限で、10月1日以降は原則として当座勘定から支払えなくなる、という内容です。
期限は金融機関ごとに異なります。紙の手形を受け取っている場合は、取引金融機関に最終振出期限と、でんさいへの切り替え手続きを確認してください。
手形割引で資金繰りをしてきた事業者にとって、「手形がなくなったら代わりに何を使うか」が切実な問題になっています。そこで、でんさいの現金化の選択肢を順に見ていきます。

04満期前に現金化する2つの方法:割引と譲渡
でんさいネット「よくあるご質問」より作成。
割引について、でんさいネットは「各金融機関がそれぞれの判断のもと独自に提供するサービス」であり、当会社では各参加金融機関の取扱い状況について把握していませんと明記しています。
割引を受けられるか、条件や割引料はいくらかは、取引のある窓口金融機関に直接照会するしかありません。「でんさいなら必ず割り引いてもらえる」わけではないということです。
譲渡は、窓口金融機関を通じて譲渡記録請求を行う方法です。分割して譲渡する場合の回数に原則制限はなく、分割する債権は1円以上と定められています。
支払期日の2銀行営業日前から、支払期日を起算して3銀行営業日を経過する日までは、譲渡記録の請求ができません。満期間際に慌てて譲渡しようとしても間に合いません。
2023年1月の機能改善に対応していない金融機関では、譲渡できない期間が期日の6銀行営業日前からとなります。
05譲渡・割引で責任が残る:譲渡保証記録
ここが、でんさいを割り引くときに最も見落とされやすい点です。
でんさいネットは、でんさいを譲渡する場合、原則として保証記録も併せて記録される仕組みだと説明しています。これを「譲渡保証記録」と呼びます。
公式の説明では、手形を裏書譲渡した裏書人が原則として遡及義務を負うのと同様に、譲渡人が電子記録保証人となり、支払企業の債務を保証するとされています。
支払企業が満期に払えなかった場合、譲受人(割り引いた金融機関など)から譲渡人に請求される可能性があるということです。
この構造は、ファクタリングの償還請求権と同じ論点です。割り引いた時点で債権の問題が完全に手を離れるわけではありません。
譲受人が保証を要しないなら、保証記録をしない譲渡もできます。ただし、保証記録をしない譲渡を取り扱っていない金融機関もあるため、窓口金融機関への確認が必要です。
保証記録を伴う譲渡や割引は、財務諸表への注記が必要になる場合があります。でんさいネットは、企業会計基準委員会の実務対応報告第27号に基づく扱いを案内しています。
詳しくは税理士・会計士に確認してください。
06でんさい割引とファクタリングの違い
両者は「債権を前倒しで現金化する」点が共通しますが、対象としている債権が違います。
でんさいネット公式情報と、当サイトの償還請求権の解説より作成。
前提として、でんさいは取引先が発生記録をして初めて存在します。取引先がまだ請求書の段階にある売掛金は、ファクタリングの対象にはなり得ても、でんさいの割引には出せません。
また、当サイトの掲載11社の公式サイトを確認した範囲では、でんさいそのものの買取対応を明記している会社は見つかりませんでした。持ち込みたい場合は、各社に個別に確認してください。
融資・手形割引・ファクタリングの全体的な比較はファクタリングと他の資金調達方法を比較で、費用の考え方はファクタリング手数料の相場は?で整理しています。
07受け取る側の注意:取適法で、でんさいの満期や手数料の扱いが変わった
2026年1月1日に、下請法が「取適法」(中小受託取引適正化法)に改正されました。発注側から代金をでんさいで受け取る下請事業者にとって、実務上の影響があります。
条文(第5条)は、代金を支払期日の経過後なお支払わない行為に手形を交付することを含めて禁止しています。手形を交付しての代金支払いは認められません。
でんさいを使うこと自体は可能です。ただしでんさいネットは、取適法の対象取引では次の点に留意するよう案内しています。
- 満期日は原則として、納品日から60日以内の支払期日までに設定する
- 満期日が支払期日より後のでんさいは、受取側が自ら割引を受ける必要があるなら使用できない
- 入金手数料や、債務者請求方式での発生記録手数料は、発注側が負担する(代金から差し引けない)
- 支払期日より前の割引は、満期日が期日内で満額が自動入金される状態なら、受取側の自由。割引料は受取側の負担
取適法の対象は、製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託・特定運送委託などです。単なる売買契約は対象外で、すべてのでんさい取引に当てはまるわけではありません。
でんさいネットは、2027年4月1日施行の「支払告示」も案内しています。こちらは満期日を60日以内にする必要はないとしていますが、満期までが著しく長いでんさいは問題となる場合があるとしています。
対象かどうかは公正取引委員会に確認してください。
08どれを選ぶか:手元の債権の種類で決まる
選択は、いま手元にある債権の形で分かれます。
- すでにでんさいを受け取っている — まず取引金融機関に割引の可否と割引料を確認。満期まで待てるなら待つのが最も費用がかからない
- 取引先への支払に充てたい — でんさいの譲渡で、現金を介さず相殺できる
- 取引先がまだ請求書の段階 — でんさいの割引は使えない。売掛債権を売るファクタリングが選択肢になる
- 紙の手形で受け取っている — 廃止が近いため、取引先にでんさいや振込への切り替えを相談する
ファクタリングを検討する場合は、1社だけで決めずに条件を比べるのが基本です。進め方はファクタリングの相見積もりの取り方を参照してください。
09まとめ
- 1でんさいは満期前でも、金融機関での割引か取引先への譲渡で現金化できる
- 2割引は各金融機関の独自サービス。でんさいネットも取扱状況を把握していないため、取引銀行への確認が必須
- 3譲渡・割引は原則として譲渡人が保証を負う(譲渡保証記録)。償還請求権と同じ論点
- 42027年度初に手形の電子交換所での交換が廃止される。でんさい等への切り替えが進んでいる
- 5取適法の対象取引では、満期日と手数料の負担に制限がある
- 6取引先がまだ請求書の段階なら、でんさいではなくファクタリングの出番
本記事はでんさいネット、金融庁、全国銀行協会、公正取引委員会などの公開情報に基づく一般的な整理です。個別の取引への適用は、取引金融機関や専門家に確認してください。
本記事の情報源
以下の公開情報を2026/10/03時点で確認して作成しています。手数料や条件は変更される場合があるため、お申し込み前に必ず公式サイトでご確認ください。
- でんさいネット「でんさいとは」
- でんさいネット「でんさいのメリット 受取利用編」
- でんさいネット よくあるご質問「でんさいを手形のように割り引いてもらうことはできますか。」
- でんさいネット よくあるご質問「でんさいの(分割)譲渡に何か制限はありますか。」
- でんさいネット よくあるご質問「「譲渡保証記録」について教えてください。」
- でんさいネット よくあるご質問「中小受託取引適正化法(通称 取適法)において、でんさいを支払手段として利用するに当たって、特に留意すべき事項はありますか。」
- でんさいネット よくあるご質問「「製造委託等に係る代金の支払に関する特定の不公正な取引方法」(2027年4月1日施行)において…」
- 金融庁「手形・小切手機能の全面的な電子化について」
- 全国銀行協会「手形・小切手機能の全面的な電子化に関する周知・広報活動について」(2026年6月)
- e-Gov法令検索「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」(第5条)
- 公正取引委員会「取適法」


